【記事感想】ドイツ「モノの図書館」
新春いっぱつめ、です。
1月1日付の朝日新聞朝刊より。国際欄に図書館の文字を見つけたので、今回はこの記事について書こうと思います。(一般的な『図書館』ではありません)
「モノの図書館」人気 ドイツ (要約)*1
中間層の多いベルリン東部の住宅街に、会員制の物を貸し借りする店があるという。運営メンバーの英語教師は「モノを貸し借りする図書館がつくりたかった。モノは住民の公共財。地域の連帯を強める触媒」と話している。店の賃料である月420ユーロは寄付でまかなわれている。またベルリン自由大学の構内にも同様の店ができる。
周辺の欧州の国に比べて、ドイツは労働市場が柔軟で失業率も低い。しかし脱成長をうたう政治が背景にあり、大量生産・大量消費を見直す試みがすすんでいるという。
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この記事を読んでまず思い出したのが、2012年8月31日のカレントアウェアネスの記事、「ケーキ型、貸します。(記事紹介)」です。アメリカのカンザス州にはケーキの型を貸出している図書館があるそうです。さすが図書館だけあって、型がOPACに登録されていたり、ILLも可能とのこと。
文末には「シンセサイザーを貸し出す図書館(米国)」(ミシガン州)、「ウクレレを貸し出す図書館(米国)」(マサチューセッツ州)のリンクも張ってあり、既存の図書館がモノを貸し出している情報も得ることができました。*2
海外だけでなく日本ではどうかと考えると、勤務している公共図書館でもモノを貸出していました。それは、紙芝居の枠(舞台)です。所蔵する館は限られていましたが、きちんとOPACにも登録されています。かさ張るので貸し出しは主に団体向けかなと思っていたら、意外と普通のお母さんにも借りられていたので、需要を感じました。
また既存のハコモノ図書館に限らず、コミュニティから図書館をつくる、もしくは空間に本を置き本を介して人のつながりを感じさせるような試みはあります。
個人の本棚を図書館化するサービスリブライズや、学生のアイディアである大学内の空きロッカーを利用した本の共有サービスReBooks、長野県小布施町立図書館のまちじゅう図書館、駅の中にある旅人のための私設図書館*3など、ICTを利用したサービスからそうでないものまで様々です。
結論
いくつか事例を挙げてきましたが、はじめの「モノ図書館」も含めて、図書館には貸出のイメージが定着しているようです。
高度情報化社会が発達し、社会や人々の生活、考え方等に転換を求められている現代において、昔に戻るような人と人とのつながりを感じさせるモノというのは、重要視されています。
イタリアでは伝統的に保存のための図書館が主軸として存在しており、読書のためのパブリック・ライブラリーが広がったのはここ数十年のことだそうです。*4この記事は、「図書館は利用するもの」ということの表れだと私は思っています。
貸出は利用者へのサービス提供の初歩であろうので、それを超えたサービスは、それぞれの館の特色にもなるので、工夫してもっともっと発展させるべきだと思います。